10月30日 おそれて、こわがらず / 権上かおる

権上です

◯原発の途上国への輸出

ベトナムへの原発輸出交渉が再開、
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110929/bsg1109290500002-n1.htm
インドへの輸出交渉開始と報道されています。
http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/yomiuri-20111030-00011/1.htm
自分の頭の上のハエも追えないのに許されない行為ですね。

◯山と森林、水源地の汚染と除染法が気になっているところ

日本化学会酸性雨問題研究会第35回シンポがまさにこのテーマでした。
このシンポは、毎年春秋2回開かれ、だれでも参加(資料代500円)できます。
テーマは毎回異なりますが、やはり今秋はこれとなったものです。

福島を訪れると、この広大な山地森林の除染はどうするんだ!と思います。
林野庁からは、「民家の直近20mまで行う」と発表がありましたが、
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/110930.html
20mの先には、まだ蓄積があり、土砂の流出とともに下降することは容易に想像できます。

私が本シンポの講師のお一人に「山地の除染法」を質問したところ、「何もしない選択肢もある」というお答えでした。「う~ん。そう来るのか」
週刊誌などで騒がれ始めたセシウム花粉も現実のようですし、(植物は生長点に必須元素(カリウムに伴うセシウム)を送り込む。量は多くはないだろうがとの見方)そもそも杉の被ばく事例は福島が初めてのようです。高濃度帯の杉は伐採が必要なのではないでしょうか。

  ・・・・・・・・・・・(文責は私にあります)・・・

福島原発事故による放射性物質の環境影響
酸性雨研究から放射性物質の環境汚染を考える(敬称略)

発生源(佐藤修影・東北大)
・核燃料は外部に漏れてはいないだろう
・ウラン、プルトニウム、レニウムなどは、サイト内近傍に堆積では
・アルカリ土類バリウム、ストロンチウムは土壌、海洋を汚染した
・アルカリ金属(Cs2Oとして揮発)広範囲に拡散
・セシウムCs-134とCs-137の比は、ほぼ1が今回の特徴
・モリブデン、テルルなどは拡散・堆積
・ハロゲン(ヨウ素、キセノンガスなど)は、爆発時に揮発、広範囲に拡散
・ストロンチウム、プルトニウムは健康影響与える量は飛散していないだろう

 (他の講師も一致して)

地表面沈着・広域分布実測(鶴田治雄・東大)
・空間線量率と土壌沈着量は良く一致する
・ヨウ素I-131(半減期8日)濃度/Cs-137(同30年)単純にヨウ素が減少するのではなく、変動し、5月下旬~6月上旬が約5~10倍大きくなった。原発から大気に放出される際、I-131の比率がなんらかのメカニズムにより変化している可能性あり
・8月以降ヨウ素は検出されていない
・福島大渡辺明教授調査 降水;I>>Cs ろ紙;I<<Cs →セシウムは粒子状
 I-131/Cs-134+Cs-137=5  (渡辺氏は何年も全降下物を福島大で採取、ろ別したろ紙も保存されており、貴重な試料となっている。解析これから)

大気中輸送・沈着のシュミレーション(大原利眞・国立環境研)
・筑波;核種構成比;I-131+134 60%~90% Cs-134+Cs-137,5~30%程度 その他テルル、テクニチウムなど
・Cs-137の影響は、福島以外は、宮城、山形、関東地方、中部地方東部まで及ぶ
・時期は、3月15-16日、3月20-22日の2期間に集中して拡散
・東北南部、関東、中部東部の1都15県に沈着が28%を占める。福島、群馬、宮城、栃木、茨城で沈着量が多い

森林生態系での動態(吉田聡・放医研)
・福島県の70%が森林
・ヨウ素は林床まで、セシウムは樹木体に直接、リター層(土壌有機質層を含めた表層)に90%堆積
・ベラルーシの松林では、放射性セシウムは時間がたっても土壌表面層に蓄積
・チェルノブイリの松(樹齢35年?)の断面の放射性セシウムの分布は、樹皮とその下の形成層に集中している
・日本のキノコ 大気核実験時のCs-137の中央値;53Bq/kg(乾重)(通常は10以下)キノコはいま大丈夫でも数年後が大丈夫の補償はない
・(福島)広葉樹林のリタ―層が高い

土壌から河川水および地下水への移行(恩田裕一・筑波大)
・ヨウ素は林床まで、セシウムは樹木体に直接
・地域の蓄積量は、濃度(Bq/kg)ではなく、沈着量(Bq/m2)を用いて表す
・川俣町調査;土壌の表面から5cmに100%
・林内雨は今も高い濃度
・河川水、井戸水への移行は少ない
・河川水中のCs137/Cs134濃度は、上流のCs137蓄積量に相関する
・浮遊砂には多くの放射性物質が流下している可能性が高い。細粒な土壌粒子に吸着されるため
・細粒子が集積すると飛躍的に線量高まる。原発事故で直接沈着した場所とは異なる
・これまでスギの被ばく事例はない。なかなか吸わないので、いまのうち切るのも一法

スギ花粉問題、林野庁10月21日100カ所モニタリングする。花粉移行はゼロではない
以上

10月30日 おそれて、こわがらず / 権上かおる」への1件のフィードバック

  1. 権上さま
    いつも丁寧なご報告をありがとうございます。
    昨日は、日本テレビの「鉄腕ダッシュ」で、防護服を着て2時間の滞在で、ダッシュ村の除染の模様をやっていました。
    ダッシュ村は、高木真三さんが原発事故直後に調査した時点でも現在でも、最も線量の高い「赤宇木」から何キロも離れていない場所です。
    山襞を下って雨水が合流する地点の落ち葉溜まりでは40近くの線量を示していました。将来を考えると、愕然とします。
    原発輸出にしても、許されない人道にもとる行為と思います。
    今後とも大切な情報のご提供、よろしくお願いします。

コメントを残す