2012年2月3日~6日 いわき市久之浜町での記録・記入支援活動の報告 / 菊池京子

去る2月3日~6日までの4日間、久ノ浜と平で、現地在住の方に、2011年3月から7月までの行動を記録するお手伝いと、それを元に県民健康管理調査問診票に記入するお手伝いをしてきました。
ご報告が遅くなりましたが、この活動とそれ以降、2月いっぱいの模様を記します。

3日 久之浜公民館 2名(60歳女性、60歳女性)
4日 久之浜浜風商工会  2名(50代女性、30代女性)
5日 久之浜公民館 0名
6日 平(いわき駅前)1名(40代女性)
合計5名様のお手伝いをさせていただきました。

○久之浜の2会場には、事前に開催のお知らせのチラシポスターの掲示をお願いしました。2月1日の福島民友新聞には、問診票記入サポートという見出しで、事前の告知記事を出していただけました。
6日のいわき駅前での記録支援は、この記事を見て直接菊池にご連絡いただいた方でした。

○3日(金)は、久之浜公民館で確定申告の相談会が行われ、出入り口横の廊下にデスクと椅子で記録・記入支援の会場を作りました。公民館側が大きなストーブを出してくださったので、とても寒い日でしたがさほどの寒さを感じなくて済みました。
この日は、久之浜地区からさらに北の大久地区の方を対象とした確定申告相談会で、お手伝いした方2人とも、元は大久地区の方です。現在はそれぞれ別の場所で避難生活されています。
最初、お一人が記録・記入支援を目的におみえになり、聞き取りを始めていると、確定申告を終えた方が覗かれました。こちらの支援内容を知ると、「途中まで書いて不明な点があるから教えてもらいたい」と、問診票を自宅に取りに戻られました。お越しいただいたこのお2人は、同じ歳で子どもの頃からのお知り合いだったので、いろいろおしゃべりしたりしながら、約1時間半程度でお2人の問診票の記入まで終えました。

○4日(土)は、常磐線の西側、久ノ浜小学校の校庭にプレハブで作られた浜風商店街の中の商工会で、記録・記入支援を行いました。
この日、商店街では豆まきのお楽しみ会が開かれ、商店街の奥には大きな口を開けた鬼の顔の作り物が立てられ、ボールを投げて入ったら景品がもらえるゲームがしつらえられていました。
そのゲームの歓声が聞こえる商工会の事務所の会議スペースでお二人の記録・記入支援を行いました。
前回この事務所にうかがった時に、記録・記入に関心を示されず、ご自分の行動はかなり複雑だったので思い出しをあきらめるようなことをおっしゃっていた方が申し出られて、1時間半強かかりましたが、かなり正確に行動をトレースでき、それを元にすれば、ご家族の分も記録・記入できる状態までお手伝いできました。
次に、その方のお仕事つながりの女性がみえました。お一人暮らしで、なかなか当時の行動を思い出せず、問診票の始めの部分を書いたものの、細かい行動の再現はできていませんでした。
携帯のメールが残っていたので、ご家族や職場の方々とのやりとりの文言などから、当時の行動を逆算するなどして、約1時間半で問診票の記入もできるまでお手伝いできました。

記録・記入支援の途中、諏訪神社の高木優美さん(北いわき再生復興プロジェクト「結」代表)が、夏の奉奠祭の際本部テントに置き忘れたカメラ機材のバッテリーを届けてくださいました。記録・記入支援の趣旨を改めてお話しし、津波被害の家々の片付けなど、屋外作業を行ってきた「結」のボランティアさんたちにとって、屋外行動の記録が大切なことをお話ししました。

○5日(日)は、再度公民館をお借りして、玄関に近い場所にデスクを設置しましたが、残念ながらどなたもおみえになりませんでした。確定申告の説明会を土日も開催すると勘違いしていたこちらのミスでした。早めに片付けて、この日は失礼しました。

○6日(月)は、電話で予約をいただいた平市街在住の方と駅前で待ち合わせし、喫茶店で記録・記入支援を行いました。小学生のお子さんをお持ちで、放射線の影響を非常に心配されておられました。
この方も問診票を途中まで書いたものの、行き詰っておられました。
しかし、途中まで書いたということは、必ず思い出せることだとこれまでの経験からわかっていたので、自信を持って「大丈夫、思い出せますよ」と言ってさしあげられ、そのことでまず安心していただけます。気持ちが楽になったところで細かくお話しをうかがうと、詳細な行動も思い出すことが可能でした。
この方も、1時間半で行動をトレースできました。お子さんとはほぼ行動が同じなので問題ありませんが、ご主人はお仕事があったりして別行動の日にちや時間があり、違いの部分を指摘して思い出しのヒントをお教えしました。

いずれの方にも、終了時、「問診票に記入して県に提出する場合は、必ずコピーを取り、聞き取りで記入した『思い出しのためのメモ』といっしょに、大事な人生の記録として保管してください。将来、2011年3月から夏までの行動の記録が必要になる時が来る可能性もあるので、大切です」とお話ししてお別れしました。
いわきでの2月3日~6日までの4日間の活動は以上です。

○帰京してから、「つながるはがき」作戦で皆様から寄せられた往復はがきで、5名様に「清書する時に分からなくなったらご連絡ください」とご案内をしました。
5名様のうち2名様から、「気がかりだったものをすっきりと終えることができてよかった」という内容の、気持ちの良い、ありがたいお礼のお返事が来ました。

対象者の大前提を県民202万人として始めた支援活動ですが、人数は本当に少ないものの、こうして記録のお役に立っていることはとてもうれしくありがたいことです。
細々でも、これまでやってきたことは、無駄でも間違いでもなかったのだと思えました。
これも、皆様が後押しをしてくださったおかげです。ありがとうございます。

○江東区東雲の避難者の自治会でも、「記録・記入のお手伝いをします」というチラシポスターを貼り出していただけることになりました。
これはもう、菊池個人の電話番号を入れて、個々でも対応する所存でお願いしました。
しかし、2月末現在、特にご要望のご連絡やお問い合わせはありません。残念です。

○2月半ば、荒川区社会福祉協議会での記録・記入支援のことを聞きつけた東京都の避難者支援の担当の方から、記録・記入支援についてお問い合わせをいただきました。
記録・記入支援の内容と趣旨をご説明し、お手伝いできることは可能な限り対応する旨、お伝えしました。

○お手伝いできた方が増えるたび、「どんな方にも、丁寧にお話しを聞いていけば記憶辿り、記憶たぐり、記録再生がほぼ必ずできる」という思いを強くします。
あともう2人ぐらい、いっしょに聞き取り伴走ができる方がいれば・・・と
思わないでもありませんが、これまでのニーズやデマンド(お申し越し)の人数からすると、今のところ、菊池一人で動く程度で、ちょうどいいようです。

○余談になりますが、25日(土)、明治大学にて、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんの講演がありました。勉強のために聞きに行きましたが、講演修了後、これまでの記録・記入支援活動のことをお話しし、記録を残すことについてのお考えをうかがいました。
最初、調査への協力と誤解されかけましたが、「あくまで記録を残すことを目標にしていること、問診票の返送は個人の判断によるが必ず問診票のコピーも手元に残してもらうようにしていること、思い出しメモといっしょに保管するようお願いしていること」を説明すると、にっこり笑って「それでいいと思います。将来喧嘩しなければならなくなったときに、記録は大事です」とおっしゃっていただきました。
これまでの活動の方向性と基本的な考え方が間違いではなかったことに心から安堵しました。

県民健康管理調査は現在、報道を見る限り、名称とは異なって調査対象者個々人の健康に細かく配慮したものとはまったく言えないものです。データ収集を目的としているのがあきらかに透けて見え、福島県立医大の山下俊一副学長は県外の医療機関に、個別で甲状腺検査を申し込む動きに対して、学会を通じて福島県と別の方法での検査を自粛するように要請するなど、発災直後からの信頼しかねる言動が続いています。
したがって、自分の記録を自分を守るための基本情報として、一人でも多くの調査対象者が持たれることを、菊池は切望して止みません。
そのためのお手伝いを、今後も必要とされる方がおられる限り、こちらの可能な限り続けます。
谷根千・駒込・光源寺隊をご支援くださる皆様、今後ともご理解とご協力をお願いいたします。

以上2月28日記

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