東京駅の屋根のスレートについて経過報告です。
結論から言うと、状況は流動的で熊谷さんのいう、スレート募金はJRの意向でいまのところできそうもありません。使わせる使ってもらうことはどうにか確約をとりました。
それでべつに募金したいひとの受け皿を作りました。でも熊谷さんはげんきで「うちはいらない」といっているので、雄勝天然スレートの復興資金にします。
『雄勝のスレート産業を復興する会』代表 森まゆみ
ゆうちょ銀行 10180-43230701
郵便局の機械からは通帳、カードでタダで振り込めます。他行から振り込む時は、ゆうちょ銀行店名ゼロイチハチ(ぜ、からいれる)普通4323070です。よろしく。私が預かってますが、安田邸のマネージャー多児貞子さんが監査しているので大丈夫です。
以下経過報告です。
◎4月9日に最初の呼びかけ文を送りました。
みなさま
谷根千工房の森まゆみです。ご縁のある、頼りにする方達にBCCでお送りしています。
きょう、石巻市(旧北上町)で多くの文化財の茅葺きをしてきた熊谷産業社長熊谷秋雄さんが東京へ来て立ち寄ってくださいました。私の長年の町つくり仲間です。石巻市は死者2492人、行方不明2770人(7日付)と大変な被害です。熊谷さんのところは従業員は北上川で茅刈りの最中でしたが、日頃の訓練を生かしてみな無事、家族もみな無事でした。しかし家も会社もすべて失いました。
ちょうど、熊谷産業では赤煉瓦の東京駅の修復のため、屋根瓦をていねいに外して、北上に運び、使えるのと使えないのを選別して、汚れを取り、結束して東京へ持っていく直前でした。この瓦のほとんどは戦後の修復の際の登米産の良質なものです。それが津波に洗われ泥だらけになりました。しかし調べたところ、2万枚は回収が不可能でしたが、4万5千枚は洗って塩気を取ればじゅうぶん使えると熊谷さんは言います。ところが残念なことに、JR東日本の設計部と施工会社(鹿島・清水)は工期が遅れないよう、スペインにスレートを発注すると言っているそうです。
そもそも東京駅は建築学会、建築家協会、「赤煉瓦を愛する市民の会」を始め、大正三年竣工した辰野金吾設計の建物を愛する人々によって、ひろく結集した力で保存が決まり、重要文化財にも指定されたものです。その運動に際しては登米や雄勝からも多くの署名や協力をいただきました。自分のところのスレートが東京駅に使われているというのが土地の誇りだったからです。今回,打撃を受けた当地の人たちはスペイン産のスレートに変わったとしたらどんなにがっかりなさるでしょう。反対にJRがそれでも泥のなかからよみがえった登米さんの瓦を洗って使ったらどんなに元気が出るでしょう。JRは全面広告で新幹線の復旧や東北復興に全力を注ぐといっています。高い広告料を払うより、べつのかたちで東北を支援してほしいものです。
熊谷さんは「スレート瓦を一枚に付き2000円とか、3000円とか寄付をいただき、一枚一枚に東北へのメッセージと名前を書いてもらう、それを東京駅の屋根に乗せ、集まったお金でぜひ、全壊した木村満さんの「雄勝天然スレート」の工場を再建することはできないだろうか」と相談に見えました。いまあるスレートで使えるものはとにかく使い、足りなければ雄勝のスレートを使うなり、スペインに発注するなりすればいいと思います。登米のスレートを載せた東京駅が東北復興のシンボルになる、大変素晴らしいプランだと思います。
なぜ心配かというと「雄勝天然スレート」が復興できないと、これから日本の文化財洋館は国産のスレートで葺けなくなります。登米の方は掘り尽くして天然スレートの岩盤が露出して取れるのは木村さんのところだけです。私も前にお訪ねし、戦争直後、東京駅の応急処置をした職人さんのはなしも聞きました。
熊谷さんの方はどうするの?と聞いたら、僕の方は自分でどうにかしますよ、と意気軒昂でした。でも熊谷産業も会社の形で文化財の茅葺きをしている日本で唯一の会社です。応援したいです。今日聞いた話で情報に多少まちがいなどもあるかもしれません。でも保存に関わったものとして、自分を度外視した熊谷さんの義侠心にお味方申さないわけには参りません。JRにパイプのある方、メディアにいる方、アイディアのある方、お金のある方、どのようにでも御協力ください。何ができるかなど具体的にメールをくだされば嬉しいです。
さっき、千駄木安田邸へいって『赤煉瓦の東京駅を愛する会」の中心メンバーである多児貞子さんとも相談しました。そこにあつまった女性ボランティアたちはみんなでスレートを洗おう、スレート洗い観音を作ったら、と盛り上がりました。みなさま、いろいろの形で被災地支援されていると思います。お騒がせして申しわけありません。でもこれもはっきり顔の見える支援先であることは間違いありません。
http://www.kayabukiyane.com
http://blogs.yahoo.co.jp/akanef0118森まゆみ
赤れんがの東京駅の多児貞子さん、芸大名誉教授の前野まさる先生と相談して次ぎのような要望書をつくり,賛同者を集めました。
東日本旅客鉄道株式会社
社長 清野 智 様赤レンガの東京駅を愛する市民の会
事務局長 前野 まさる
および有志一同(別紙名簿の通り)東京駅赤煉瓦駅舎の屋根のスレートについて
拝啓 このたびの東日本大震災では、関東と東北を結ぶ大動脈である東北新幹線および管内の鉄道網に甚大な被害を被りましたことに対し、心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧を願ってやみません。
さて、現在、復原修復工事が進められております東京駅赤煉瓦駅舎は、来春の竣工に向けて工事が旧ピッチで進められていると承知しております。復原される駅舎三階には、今回の東日本大震災で大きな被害のあった石巻市雄勝町や登米市産のスレートが使われるとのことで、地元の方々には復興のシンボルとして大きな希望を与えるものと確信をしておりました。
ところが、漏れ聞くところによりますと、結束して発送する直前だったスレートは津波被害で汚れたため、急遽、スペイン産のものを使うとのことを伺いました。汚れたとはいえ、地元の方々が自宅や工場が流出する中、高台へ運び守ってくださったスレートで、戦後の修復の際に使われた登米産や雄勝産のものです。日本の 文化財修復では、建築の遺伝子をもつ当初材などを尊重するのが原則であり、以前の材料をできるだけ使うのは当 然です。
何とか、登米産及び雄勝産のスレートを使い、文化財修復の基本を踏まえるとともに、被災された方々が復興への希望をもてるようにしてください。
汚れたスレートは、できればボランティアを動員して洗浄したいと考えておりますので、是非とも再考をお願い申し上げます。
敬具
5日間で3037名の賛同者が集まりました。
東京新聞 読売新聞 朝日新聞,河北新報などが取材してくれました。
4月15日朝,JR東日本に要望書を手渡しに行ってきました。その報告です。
茅葺きの熊谷産業と東京駅のスレート屋根についてご報告
その後も賛同者は増え,追加は2000人を超えています。
私はその後、18日に北上町、雄勝町のスレートの現況を見てきました。
熊谷産業の担当者から
「スレートの塩についてですが、スレートは、粘板岩であるため、粘土層です。そのため、粒子が細かく、水を吸い込むことが考えにくいです。また、吸水率も、0.0何%とかなり低いです。沿岸部で使われているにもかかわらず、潮風で石が風化したと聞いたこともありません」
というメールをいただきました。雄勝天然スレートの木村満社長も同じことをいわれています。JR東日本も現況調査にその日午後来るとのことでしたが、新聞によると使えるものは使うと変わってきました。しかしイベントや瓦寄進などはやってほしくないようです。調査の結果をまた聞きに行きます。
皆様の御蔭で被災地の下請けが泣くことはとりあえず避けられました。
次ぎは地場産業である茅葺き、スレート屋根の会社復興も考えて行きたいと思います。
とりあえず経過報告まで。長々と失礼しました。
森まゆみ
JRに「使わせる」という言い方は、相手に対する礼を失していませんか?
森さんの活動には賛同していますが、上から目線の発言は慎んで頂きたい。